苦手な読書感想文,どのように書くべきか

夏休みになると思い出すのが、子供の頃の読書感想文。苦手でした。

ドリルや工作といった他の宿題は苦ではなかったし読書自体も別に嫌いではなかったのに,それが読書感想文となった途端,急に気が進みませんでした。
 
子供が読書感想文に対して苦手意識を持つ大きな原因として,「レポート特有の文書作成方法を教わっていないから,書き方がわからない」ことが挙げられるのではないかと思ったので,以下にまとめます。
自分の子供が将来宿題で困っていたとき,適切な助言をしてあげられたらな,と思います。

読書感想文への苦手意識

読書感想文を苦手と感じていた理由は,いくつか思い出せます。例えば,
  • 本の選び方がわからない(真面目そうな本を選ばないと宿題として認められないかもしれない)
  • 本を何日で読み終われるかわからない(作業時間を見積もれない)
  • 頑張って本を読み終えたとしても,本当に感想文を書けるか自信が無い
といったものです。ただ,これらの根っこにあるのは「そもそも読書感想文って何を書けば良いのか,サッパリわからない」という点ではないかと思います。最終的にどんな文章を書けば良いのかイメージできていないので,本選びや読書といった過程全てが苦になるのではないでしょうか。

読書感想文はレポートに近い

自分が小学生の頃を振り返ると,学校の授業で自由作文(日記)や物語文を作成する練習はさせてもらった記憶があります。この時,句読点の使い方や文法のルールは教わりますが,文章の内容については自由な発想で書きなさいと言われ,あまり指示されなかったと思います。
確かに自由作文や物語文は自由な発想で書けば良いのですが,読書感想文もそれらと全く同じで良いかというと,違うような気がします。読書感想文では何を書いても良いわけではなく,当然「感想」を必ず書かなければいけませんし,「本のおおまかな内容」も書いた方が良いでしょう。よって,「本のおおまかな内容」→「感想」という構成で書くのが良さそうです。
構成がある程度決まっているという点では,読書感想文はレポートに近いと言えます。例えば理科系の実験レポートを書くときは,「方法」→「結果」→「考察」という流れで書くのが一般的であり,構成に関しては下手にオリジナリティを発揮せずに上記の流れに沿って書くのが,読みやすくて良いレポートだとされています。読書感想文に関しても,構成を教わった上で書いた方が,自分の頭の中を整理しやすく,かつ読み手にとっても読みやすい文章になりそうです。
少なくとも私の子供の頃は,作文教育の中で,書きたいものが自由作文なのかレポートなのかといった区別をしていた記憶がありません。両者ひっくるめて「構成をルールで縛るのは,自由な発想を阻害するので良くないことだ」と勘違いされていたように思います。

どのように書くべきか

完全な答えはできていませんが,少なくとも,まずは読み手が誰なのかを明確にするべきだと思います。構成を意識した文章を書く上で重要なことです。子供の頃,「この作文は先生宛に書くのだろうか?先生はこの本を知っているから,説明は省略しても良いのだろうか?」と悩んだ記憶があります。読み手は,例えば「その本を読んだことのない誰か」だと決めてしまうべきでしょう。読み手が明確になって初めて,「本のおおまかな内容」をどの程度説明すれば良いか,「感想」で「こんなシーンが良かった」と語る際,そのシーンをどの程度説明すれば良いかという指針ができます。
子供の頃に読書感想文を書くのは苦手だったのに,大人になってからSNS等でよく本のレビューを書いている,という人もたくさんいるのではないかと思います。何故でしょうか。大人になって文章力が上がったからだというのも理由の1つだと思いますが,おそらくそれだけではなく,レビューでは,読み手が「まだその本を読んだことの無い誰か」と明確化されているので,感想文よりも手を付けやすいのだと思います。
 
「感想」の中身については,それこそ自由な発想で書くのが良いと思います。文章の構成は一般的な流れに淡々と従い,その代わり,内容ではしっかりとオリジナリティを発揮するのです。例えば,自分が「良いシーンだな」「良い表現だな」と思った点を切り出し,なぜ良いと思ったかという理由を添える,といった書き方があると思います。

余談:レポートの文章

さすがに読書感想文とは関係が薄いので余談として書きますが,理科系の論文等の多くでは,文の順序を
  1. 結果等の重要な文
  2. 理由等の補助的な文
とするのが,読みやすくて良い文章だとされています。全体の流れだけでなく,文章の構成にまで,ある程度暗黙のルールがあるのです。重要な文を出し惜しみせずに先に書くことで,何を言いたいのかが明確になります。
例えば日常会話で「切符を買いたいしトイレにも行っておきたいし,あと私は歩くのも遅いから,先に駅に行くね」と言う状況を想像します。これを論文風の構成にすると「先に駅に行く。理由は以下の3つ。1.切符を買いたいから,2.トイレにも行っておきたいから,3.私は歩くのが遅いから」となります。聞き手にとっては,話し手が「先に行く」のだという情報だけが重要で,あとの理由は補足情報に過ぎません。論文風の構成であれば,結局話し手がどうしたいのかを瞬時に理解できます。
英語では,論文だけでなく一般的な文章も上記のような構成にすることが多く,Topic sentence → support sentenceの順序で書きます。中学生の頃,初めて外国人講師から英作文の授業を受けたとき,文章構成にルールが存在することを知って,衝撃を受けたのを覚えています(何故自由に書かせてくれないんだ!と,最初は反発しました)。
 
論文以外の文章でも,上記のような構成に沿って書いた方がわかりやすい場合もあるので,適宜活用したいものです。
せっかくブログ等が広まって,多くの人が自分で文章を書くことに興味を持ち始めている時代なので,今後,作文教育にもっと力が注がれることに期待します。社会全体において情報の質を底上げする,ビッグチャンスのように思えます。大袈裟ですが。